動物の病気 最新情報

2013年2月18日 月曜日

MDR1(多剤耐性遺伝子) ひがしやま動物病院 名古屋 千種区

MDR1(Multiple drug resistance 1: 多剤耐性遺伝子)はコリーのイベルメクチン中毒で知られている遺伝子で、P糖タンパク(P-gp)をコードする遺伝子である。MDR1遺伝子の変異によりP-gpの合成が少なくなり、薬剤の耐性が減少する。ちなみにP-gpのPはpermeability(透過性)からついたといわれている。

3435番目の塩基がCからTに置換する多型において、T/Tを有する人はC/Cの人よりP-gpの合成が減少する。P-gpはアデノシン三リン酸(ATP)のエネルギー依存的に疎水性化合物の細胞外排出を行う輸送体タンパク質である。腫瘍細胞は薬物処理によりP-gpの合成が亢進し、多剤耐性となる。また、悪性腫瘍細胞でなくともP-gpを合成している細胞もあり、薬物の排出に寄与している。


つまり、1. 遺伝子の変異が起こりP−gpの合成が減少すれば、薬剤は細胞内から排泄が抑制される。2. 薬剤の影響でP-gpの合成が増加すれば薬剤は細胞内から排泄が促進される。

臨床で重要な点は1.では、MDR1遺伝子の変異がある動物に対してイベルメクチンを使用することで薬剤が細胞内に蓄積し副作用が出やすくなること。
2.では、抗がん剤を使用する前にステロイドを使用したり、抗がん剤を長期に使用することで抗がん剤が細胞内から排泄されてしまうこと(薬剤耐性ができてしまうこと)である。

また、厄介なことはMDR1が様々な薬剤を細胞外へ排泄していることである。

各種抗ガン剤
コルヒチンやタクロリムスなどの薬剤
脂質
ペプチド
ステロイド
ビリルビン
強心配糖体(ジゴキシン)
抗不整脈薬(キニジン、ベラパミル)
免疫抑制剤(シクロスポリン)
抗HIV薬

コリー、オーストラリアン・シェパード、シェルティーはMDR1の変異が比較的多いので、薬剤を投与するときには十分副作用を注意すべきである。臨床現場であまり使われなくなったがジゴキシンは安全域が狭いので慎重に使用すべきである。
また、何種類もの薬を服用している場合は薬剤耐性を考慮するべきある。

P-gpの阻害剤としてケトコナゾール、ゾスキダルなどがある。
ケトコナゾールはアレルギー性皮膚炎の治療で投与されるシクロスポリンの作用を高める目的で使用された報告がある。ゾスキダルは人の抗がん剤の薬剤耐性を抑えるために研究されている。

今回トピックにしたMDR1遺伝子は非常に興味深い特性を多く持ち合わせている。
詳細はこちら

http://lifesciencedb.jp/dbsearch/Literature/get_pne_cgpdf.php?year=1997&number=4208&file=ltHeNrHs1TMm3gH2/elVEg==



投稿者 ひがしやま動物病院

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