動物の病気 最新情報
2013年1月29日 火曜日
新しい骨折治療の固定法 名古屋 千種区 ひがしやま動物病院
Matthew D, Vet surg 2012
骨折治療へのPolyaxial Locking Plate System(PAX)の評価
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1532-950X.2012.01063.x/pdf
犬と猫の骨折整復に新しい固定プレートを用いたその後の治療結果についての報告です。
2009年12月から2011年3月まででPAXで治療された60匹の犬と2匹の猫のその後の結果を追ったものです。
平均年齢は27.6ヶ月(1.6~120ヶ月)、平均体重は13.3kg(0.5~79.4kg)、骨折の種類としては橈尺骨、骨盤、大腿骨、脛骨、上腕骨、踵骨、腸骨、寛骨が含まれていました。
評価の項目として体重、骨折した場所、骨折の部位、同時に治療した怪我、プレートサイズ、プレートの数、骨移植の有無、MIPO(Minimally invasive plate osteosynthesis)を用いたならその記録、骨片数、プレートの長さ、プレートのネジ穴の数、骨折線近くのネジ穴の数、骨折線上のネジ穴の数など詳細に記録され、複合的に判断されたものです。
骨折の癒合までに平均で7.1週間かかり、合併症が生じたのは12匹(19%)、プレートが原因での支障は3匹(5%)であり、ほかのプレート固定と比べて遜色がないことが判明しました。
結論として、多種多様な骨折線および縦骨折治療の選択肢としてPAXは有益であることがわかりました。
PAXはネジの挿入角度が任意で変えられますが、強度としてはLCPに劣ります。DCPのような効果もありません。
この新しいプレートはpolyaxial(多関節性?)でベンディングしやすい素材です。骨の湾曲がある部分にはLCPより適しています。また、スクリューがプレートにロッキングする際にセルフタッピングされるのでスクリューの挿入角度を調整できることが特徴です。

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2013年1月23日 水曜日
犬の前十字靭帯断裂の治療 名古屋 千種区 ひがしやま動物病院
Samantha A, Vet surg 2012
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1532-950X.2012.01052.x/full
犬の前十字靭帯断裂の治療において、TPLOとExtracapsular Repair(Lateral suture)の術後の回復をフォースプレートで力学的比較検討した報告です。
TPLOのほうが予後がよいという結果ですが、興味深いポイントはContact Time(接地時間)は両グループ間に有意差なしという結果です。しかも両グループの犬の体重中央値はTPLO Group36.7 ± 12kg ECR Group 32.8 ± 7.2kgであり、要検討ですが大型犬でもLateral sutureの一定の治療効果を示唆しています。
中型犬(10kg前後)でのTPLOとECRの比較が日本の臨床としては重要だと思います。
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2013年1月21日 月曜日
犬の人工尿道括約筋を使用した手術 名古屋 千種区 ひがしやま動物病院
Outcome after Placement of an Artificial Urethral Sphincter in 27 Dogs
Lauren Reeves BS, Vet Surg 2013
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1532-950X.2012.01043.x/full
どの動物にも例外なく、泌尿器の病気は存在します。
その中でも気になるものとして尿失禁が挙げられるのではないでしょうか?
尿失禁の原因は先天性のもの(尿道括約筋機能不全など)、後天性のもの(骨盤骨折などによる尿道障害など)があります。
その治療として外科的に尿道括約筋を人口のものに置換する方法がありますが、これを犬で行った場合の予後の評価が27匹の犬に対して発表されました。
尿道にカフを設置し、尿道を圧迫する方法手術を行った24匹の雌犬と3匹の雄犬の後ろ向き研究の結果です。
手術が行われた犬たちの尿失禁の原因は先天的尿道括約筋機能不全、異所性尿道整復が含まれていました。
結果として、飼い主が大変満足いくコントロールができているのが22人、満足いくが2人、満足できないが3人でした。
先天的及び後天的尿失禁について人口尿道括約筋設置術は有効であることが示唆されましたが、時間経過とともに部分的尿路閉塞が生じることが有り、これが設置からどのくらいの時間経過で起こりやすいのかは詳しく調べられていないようです。そういった兆候を見逃さないためにも今後の調査が期待されます。また、臨床で問題となる失禁として前立腺癌摘出後の失禁があります。これらの疾患に使用された事例の結果が報告されることを期待します。
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2013年1月20日 日曜日
犬の白血病に対する新しい治療の可能性 名古屋 千種区 ひがしやま動物病院
〜犬の慢性白血病におけるBCR-ABL translocation〜
Janice A, Vet Cli Patho 2010
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21143615
犬の急性白血病(ALL)に対する治療の反応は現在のところ残念ながらあまり期待できません。人において、治療効果が期待でき、副作用が少ない新しい治療が開始されています。人では、染色体異常(フィラデルフィア染色体異常:Ph陽性)がある白血病の場合、イマチニブという抗がん剤の併用療法が検討されています。
以下、独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センターより一部抜粋
http://ganjoho.jp/public/cancer/data/ALL.html
わが国の白血病治療研究グループ「JALSG(Japan Adult Leukemia Study Group)」が治療成績の向上を目指して、さらに調査を行っています。まだ治療を行っていないPh陽性ALLを対象にした、イマチニブ併用化学療法の有効性と安全性を検証する臨床試験です(JALSG Ph+ALL202試験)。この試験の中間解析の結果では、血液学的寛解率は96%で、以前JALSGで行われたJALSG ALL93試験の51%を大きく上回りました。
Ph陽性ALLでは、9番染色体と22番染色体の転座の結果、bcr-abl融合遺伝子が構成され、ablチロシンキナーゼが恒常的に活性化されます。イマチニブはこの部分に作用して、チロシンのリン酸化を阻害することで細胞が増殖し続ける流れを止め、効力を発揮する薬剤です。
今回の論文は犬の慢性白血病において、イマチニブのターゲットとなるbcr-abl遺伝子の発現を報告しています。よって、人と同様に犬の急性白血病でもbcr-ablの発現があればイマチニブによる治療が有効かもしれません。

この記事を書いている間に新しい報告を見つけました。
犬の急性白血病におけるBCR-ABLの報告です。
Acute myeloblastic leukemia with associated BCR-ABL translocation in a dog.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22747755
研究が発展することを期待しています。
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2013年1月 6日 日曜日
膝蓋骨脱臼 American College of Veterinary Surgeons 名古屋 ひがしやま動物病院
方法論としてまだ要検討ということなのでしょうか。個人的にはいい方法だと思います。いまのところ数が少ないですが、予後も悪くありません。しかしながら、個人的には縫合糸の耐久性や縫合糸の締め付け度合いによるROMの問題など、長期予後の結果を検討する必要があると思います。
http://www.acvs.org/animalowners/healthconditions/smallanimaltopics/medialpatellarluxations/
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